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コラム No.53-73

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戦略的な地域活性化の取り組み(73)公民連携による国土強靭化の取り組み【35】官民戦略プロジェクト「スタジアム・アリーナ改革」による地域活性化

公開日:2024/05/30

近年、オリンピックをはじめ国際スポーツ大会の国内開催やプロスポーツリーグ設立による地域チームの結成が盛んになっており、それに伴って大規模なスタジアムやアリーナの建設や改築が各地で始まっています。そのスタジアムやアリーナを、地域の交流拠点として多様な機能を整備する取り組みが進められています。

国が推進するスタジアム・アリーナ改革戦略

国の日本経済再生本部では、スポーツ産業を2025年までに15兆円規模に拡大させ、スタジアム・アリーナをまちづくりにおける新しい公共インフラと位置付けることにより、スポーツのみならず地域観光資源を生かすなど、地域への誘客を推進し地域活性化を推し進める方針としています。
スタジアムやアリーナは、主としてスポーツ等の競技場として建設される施設で、国内では、これまで競技に特化した単機能な公的施設を郊外に配置することが多かったと思います。しかし近年、特に欧米では、スポーツ産業の規模拡大に伴って、公園やレストラン、さらにはホテルやショッピングモールなどを併設した複合型施設、あるいはスポーツ以外のコンサート等のイベントに対応した多目的施設として整備し、地域の活性化を図る事例が多く見られます。国内においても、地域ごとにスポーツコミッション(スポーツを介して地域活性化や地域経済への貢献などを目指していく組織)が設立され、地域のスポーツ振興を推進しているところです。
そのような背景を受けて、2016年からは文部科学省スポーツ庁と経済産業省が「スタジアム・アリーナ推進 官民連携協議会」を立ち上げ、国土交通省や民間団体等の協力も得て、地域活性化の起爆剤、国家成長戦略の一環として、スタジアム・アリーナの在り方についての議論を始めています。さらに、スタジアム・アリーナ改革指針を取りまとめた「スタジアム・アリーナ改革ガイドブック」を公表し、施設整備手法や管理運営方法などについて、コンセプトの共有化を図っています。スポーツ庁の資料によれば、2023年2月時点で全国には既に88件の新設、建替計画が進行中ですが、国は、2017年から2025年までに改革のモデルとなるスタジアム・アリーナを「多様な世代が集う交流拠点」として20拠点選定するとしており、2022年度までに17拠点が選定されています。

スタジアム・アリーナを核とした地域開発事例

ここで、スタジアム・アリーナ改革施策により、既に選定された拠点事例をいくつかご紹介します。

  • (1)ES CON FIELD HOKKAIDO(エスコンフィールド HOKKAIDO)
    北海道北広島市の総合運動公園予定地をプロ野球球団に貸与し、球団が主となりスタジアムを建設。開閉式屋根と天然芝のプロ野球スタジアム内にレストラン、温泉/SPA、ホテル、グッズショップ、ブルワリー等を配備、周辺にはマーケット、宿泊施設、グランピングなどの施設を整備し、プロ野球興行がない日も楽しめる空間を提供することで、収益性を確保する工夫がなされています。
  • (2)長崎スタジアムシティプロジェクト
    民間企業が事業主体となりスタジアム・アリーナを含む大規模複合開発を推進。長崎県及び長崎市は、協議会や検討推進チームを組成してプロジェクトをサポートしています。スタジアム、アリーナ、商業施設、ホテル、オフィス等を備える複合施設として収益確保の方策を具体化し、JリーグやBリーグの興行のほか、コンサート、各種イベント等多様な利用を予定しています。
  • (3)沖縄アリーナ
    沖縄県沖縄市のコザ運動公園内に公共施設として整備。可動式の観客席を備え、Bリーグ公式戦をはじめ、コンサートや展示会など多様なイベントに対応可能な沖縄県のシンボル的施設となっています。

スタジアム・アリーナの展望と課題

このようにみると、スタジアム・アリーナ改革は、スポーツの成長産業化の大きな柱であり、地域を活性化する中心的な施設整備構想であるといえます。一方で、スタジアムやアリーナは建設に大きな投資が必要であり、運営・管理維持費用も小さくないため、持続可能な拠点とするためには稼働率を上げる工夫が常に求められます。そのためには、旧来の競技場や体育館のようなコストセンターとしての公共施設とは視点を変え、地域経済の持続的成長を支えるプロフィットセンターとして、単なるスポーツ施設を超えた、官民連携による新しい公益を発現する複合的な機能を組み合わせた交流拠点としての、革新的な発想が重要ではないでしょうか。例えばeスポーツやVR演出のように、近年のエンターテインメントはICT技術やAI技術を高度に駆使するコンテンツも増加しており、ハード面に加えて、将来を見越したソフト面をサポートする設備整備や持続可能な運用体制にも、意識を向ける必要があるかもしれません。
いずれにしても、スポーツ観戦や参加を軸に人々が交流することで、地域の魅力を国内外に発信し誘客を促す拠点として、多様化するニーズに応える次世代型スタジアム・アリーナの創造は、地域振興を図る施策として注目したい取り組みです。

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