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コラム No.27-81

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 第1回 働き方改革で、柔軟性がある職場、社員が人生を全うできる職場を準備する株式会社フレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 株式会社ハンナ 下村由加里

公開日:2023/01/31

企業の発展なしに物心両面の幸せは成立しない

秋葉:今日来ていただいたのは株式会社ハンナの下村社長です。物流人材の話で下村さんをお呼びしないわけにはいきませんし、本当に稀有な存在だと思っています。まずは、下村さんが社長をされている株式会社ハンナのご紹介からお願いいたします。

下村:そのようにご紹介いただき、光栄です。株式会社ハンナは、奈良県を中心に関西圏で、アセット型(自社施設・トラック車両・情報システム等の資産を保有し、物流サービスを提供する)でトラックの運送業をしています。車両台数は、今は絞っていて127台です。今年からHANNAグループという形にして、子会社のGLOW株式会社は大型幹線の物流を中心に18台所有しています。
私の父が創業者で、私は3代目です。創業して43期目に入りました。創業の頃は「運ぶ」ことに感謝してもらえる時代でしたが、その後、規制緩和やさまざまな時流の流れで運送会社がコンビニエンスストアよりも増えたことで、運賃の値付けの仕方が変わり、トラック事業、トラックドライバーの価値が急激に下がっていきました。

秋葉:届けてもらうことが当たり前の時代になったことは素晴らしいことですが、事業のあり方、働き方も大きく変わってきていますね。

下村:その通りです。プライドを持って仕事をしていた初期からいる社員と言われたことだけをこなすだけの社員とでは、志が全く違うものになっていました。つまり目指しているものが全然違うわけです。そんな中、2代目の社長が自分の目標を持って会社を移ることになり、ずっと専業主婦だった私が、たまたま創業者の一人娘ということで仕方なく社長を引き受けることになりました。
「仕事のために人生を終わらせたくない」というのが、父の創業の思いです。父は釣りが大好きで、仕事もするけど遊びもするという、今で言うところのワークライフバランスをすごく考えた人でした。本当に働き者で、釣りと寝る以外は働くという生活で、「そういうことをできる会社をつくっていきたい」という思いから創業したそうです。会社には「自分よし、相手よし、世間よし」の三方良しの経営理念しかなかったのですが、2024年問題※に向けて、働き方改革の中で考えなければならないことがたくさん出てきました。
※2024年4月から適用される働き方改革法に伴い物流業界で懸念される様々な問題

秋葉:2024年問題は、物流業界の大きな課題です。まだまだ多くの会社が解決策を求めて試行錯誤しています。

下村:まずは賃金改定から着手しました。労働基準法どおりの給料体系にすると、労働集約型の運送会社、特にトラックドライバーは給料が上がらなくなってしまいます。働き方改革で残業規制をつくられてしまったら、それ以上給料は稼げません。評価という仕組みだけでは改善できないところがあるのです。そこで、子会社のGLOWに関しては完全出来高で、単なる歩合いではなく業績考課に応じる評価という給料体系にしました。ハンナはあくまで労働時間がベースの時間軸給です。社員の給料体系、社員が働く結果の出し方に合わせて、会社の仕組みを変えるしかないと思って分けたわけです。

秋葉:そうすると社員には2つの選択肢があるわけですね。

下村:GLOWでの勤務はハードルが高くなっています。ハンナの評価の大前提として5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)があります。5Sにおいて今いる社員の価値観と調和が取れている必要があり、そのうえで3M(無事故・無違反・無災害)ができていないといけません。5Sと3Mが当たり前にできている人しか評価の対象にならないわけです。評価をもらえてなおかつ評価よりも稼げる人を「マイスター」と呼んでいて、このマイスターと呼ばれる人材しかGLOWでの仕事ができません。GLOWで働いているのはスタートで5Sと3Mができている人たちなので、プライドを持って仕事をしてもらっています。

秋葉:私は人を教育するという捉え方は非常に難しいと思っています。「教育」という言い方をすると、「教える」「育む」で上から与えるものになりますが、一方で社員側から見ると「学習」で、「学ぶ」「習う」という自分が自らするものになります。この両方が成り立たないと、会社も組織も、もちろん社員のレベルも上がっていきません。環境を整えたりお金を使ったりして教育をつくることができても、自らモチベーションを上げ、意識を変えていくのは難しいものです。今のお話は社員にとっても分かりやすいし、目標を持ちやすいです。下村さん、これは相当考えましたね。

下村:考えたというより、社員と話して出てきた意見をつないでつくりました。私は外で勤めた経験もないですし、実は運転も下手です。創業者の一人娘という理由だけで社長になりましたので、社内に受け入れてもらうことがまずスタートでした。創業時からいる社員に私が社長になることを伝えて、頑張るから協力してほしいと頼んだとき、「どれだけ本気か、その本気度合いを見て協力する」と言われたのです。その言葉に、それだけ人生を賭けているのだと感じました。だとしたら、社員が人生を全うできる収益、社員の生活保全ができる会社にしなければなりません。

秋葉:最初に社員の本気の気持ちを聞けたことは大きかったですね。

下村:それまでは、「お客様は神様です」という営業戦略でした。もちろんお客様は神様です。ただし神様だけでいくのは間違いだと気づき、経営理念の第1番を「お互いの物心両面の幸せ」にしました。お互いというのは社員と私、お客様と私、お客様と社員もそうです。それと父の創業の理念である「三方良し」を、最初に社員と徹底的に共有しないといけないと思いました。「企業の発展がなかったら物心両面が成立しない」という経営理念を思いつき、だったら企業を発展させるためには何が要るかと、当時の社員と徹底的に話し、出てきた意見をまとめていって辿り着いたのが5Sです。法人としては5Sでいいのですが、成長させるためには、さらに生業としてしっかり利益を上げることが重要です。運送業でいくのであれば3Mは絶対です。このような順番でした。

背景にあるライフがワークの成果を決める

秋葉:ハンナさんは、グリーン経営や健康経営優良法人といった認証を取得されてきています。これらも戦略的に始められたのですか。

下村:今、「健康経営」という言葉がよく聞かれますが、当社は奈良県で最初に健康経営の認証を取得し、奈良県知事表彰もいただきました。中小企業のブライト500も2年連続でいただいています。7年前、それまでやってきた5Sの取り組みが健康経営に使えるのではないかと思ったのがきっかけで始めました。
あるとき、総務の女子社員に、「社長はドライバーの社員満足度はよく気にしていますが、点呼者や事務方といったドライバーを支えるスタッフ職について、所得を上げたりインセンティブを上げたりするためのチャンスはどうやって与えようと思っているのですか」と言われたことがあったんです。確かにそうだと思いました。評価を考えたとき、現場に行くドライバーと事務方のスタッフでは仕事の領域が違いすぎるし、労災の認定基準も違います。そこで、認定基準の高い人、要は危険度の高い仕事をする人を「キャリア」と呼ぶことにしました。ピッキングする人、トラックに乗る人が「キャリア」で、反対に、例えば点呼者等の事務方は「スタッフ」です。
ハンナでは高卒の新卒者を毎年4人採用しています。新卒者は免許がない状態でスタッフをやりながら現場に出て、まずは荷物扱いを覚えます。2トントラックに乗り、免許が取れたら3トン、次に4トン。それができたら夜間の配送、チルド、大型です。大型で昼間の集荷に行ったら、今度は夜間。そうなるといよいよ子会社GROWのステージに上がります。新卒で入った人が20代で結婚して、子どもが生まれてお金が必要になる頃にこのステージに上がれるような仕組みをつくりたい。社員とそんな話をしました。
こうしてキャリア組の評価のつくり方はできましたが、スタッフの評価はなかなかありません。
そして、彼女たちが取り組んでくれた結果が先程の成果です。私たちの健康経営は社会保険の料率を下げるだけではなく、経営理念と照らし合わせたものです。つまり身体だけでなく心の健康も考えています。その心の健康も単にメンタルを良くするという癒しの部分だけではありません。成長すること、自分自身を自己実現に持っていくことこそが生きている限り重要なのです。

秋葉:私たちが社会に出た頃、会社は終身雇用を前提にしていました。人事制度や教育制度など、評価も終身雇用を前提にした時間軸で考えられていました。それはある意味ですごく良いことです。社内に目標にすべき人がいて、そうなるためには何をしなければいけないのかが見やすかった。現在実態として、終身雇用制度は多くの企業で機能しておらず、言葉は悪いですが、社員がそれぞれ勝手に考えて頑張ればいい、頑張った人は評価してお金をあげますよ、となっているような気がします。

下村:まさにそうだと思います。人がロボットやAIと絶対的に違うところは、人はナマモノで、旬な時期があるということです。旬な時期の最も重要なポイントが家族です。仕事をしているワークの部分より、背景にあるライフがワークの成果を決めます。ライフの充実度は会社ではどうしようもできません。だからこそ、そこで柔軟性がある働く場面を準備することが本当の働き方改革だと私は思っています。そこに健康経営をうまいことバッティングさせようと、総務の女子たちが考えてくれました。

秋葉:面白いですね。女性たちの話を聞いてみたいです。

共に生きている平等な人間同士として、意見を言える環境をつくる

下村:この女子社員というのがなんと新卒です。その前の総務は私と同年代のパート歴十何年の方々で、最初に健康経営に挑戦して、認証を取得してくれました。彼女たちが偉かったのは、新卒に目標を持たせてあげたいと考えたことです。キャリアの新卒はステージが見えますが、スタッフ職の新卒には目標が見えません。将来的なIT、DXを考えて、情報処理技術の高い事務員を採用していたのですが、高い志で向上心を持って入ってきても、入社時には総務になるので目標を見失ってしまいます。それで、目標を見つけるために健康経営をうまくアレンジしたい、勇気はいるけれどチャレンジさせてみたいと、彼女たちが挑戦させてほしいと言ったのが始まりでした。

秋葉:経営者として見失いがちな視点ですよね。利益を上げる部門にどうしても目が行きがちですが、組織力として考えれば、どの部門であっても重要な仕事です。若い世代から意見が出るというのも素晴らしいことです。

下村:新卒の女子たちは本当にいろいろと思いつきます。最初はSNSでの発信です。元々発信していたのですが、年配の人たちが書いていたので、「本日は安全大会をいたしました」というような文面でした。彼女たちは写真や動画で見てもらったり、TikTokで踊ってみたり、現場で厳しいと言われている部長を踊らせてみたりし始めたのです。それまではありえないことでしたが、新卒女子が「本社から来ました。広報のために1分踊ってください。覚えてくださいね」と一緒に踊ると、踊ってくれました(笑)。SNSは、社内の社員だけでなく、社員の家族が見ていることも分かりました。 新卒の彼女たちからのアドバイスでもう一つ面白いことがありました。新卒が取り組んできた「自分たちでつくる」ということが活きてきて、数字的な面でも自分たちで目標をつくるようになってきました。さらに、この新卒たちはHLA(ハピネス・ライフ・エンジェル)という商標登録まで取ってきたのです。
彼女たちはさらに、「カタカナは日本文化なので海外に通用しません」とアルファベットのHANNAにするように言い出したのです。元々は阪奈運輸という社名だったのを、子どもたちでも呼べるようにしたいと、私がカタカナの「株式会社ハンナ」にしたのですが、さらに彼女たちは「これからは海外の人も来るかもしれないからローマ字にしましょう」と社名を変えて、ロゴも商標登録しました。ロゴのバッジもつくりました。皆こうした象徴が欲しいということを、この総務の女子社員たちに教えてもらいました。

秋葉:彼女たちが言いやすい環境を下村さんがつくっているのも大きいのではないですか。

下村:女子社員たちと定期的に女子会を開いていて、その女子会でどんどん提案が出ています。最近は女子も増えてきましたが、運送業は男性が多い業界です。この女子会は、女子社員たちが「女子会をやりましょう」と言ったのが始まりです。季節の変わり目ごとに自分が普段行けないところに連れていってほしいと言われて、その店探しのために営業に行くこともあるくらいです。女子社員が20%に増えるまでやることにして、最近は参加人数が増えてきました。そういうところへ行くと、普段はユニフォームで仕事をしている人たちがやっぱり変わるんです。当社は女子のドライバーも多く、普段は髪型にも制約があるのですが、女子会には髪の毛を巻いてきたりして別人になります。

秋葉:いいですね。そのような環境は簡単にできることではありません。

下村:女子男子関係なく、共に生きている平等な人間同士として、意見を聞いてもらえる体制ができてきたのだと思います。創業からの社員が、最初に私に「本気でやるのか」と言ったように、自分たちがここで人生を全うすると思って働いてくれている社員がいたからこそできたことだと思っています。

過去のトークセッション

土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス会長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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